航空機産業界セミナー -長野県における航空機システム拠点の形成-


 

2017年12月16日(土), 東京大学本郷キャンパスで, 

航空機産業界セミナー -長野県における航空機システム拠点の形成-

がありました.

私は, 学科の航空機力学という授業で教授の紹介によってこのセミナーを知りました.

2時間のセミナーでしたが, 簡潔にまとめたいと思います.

長野県航空機産業振興ビジョンの進展

長野県産業労働部ものづくり振興課 課長 沖村正博氏による講演でした.

長野県の概要について

長野県は日本の真ん中に位置しており, 2027年にはリニア中央新幹線も開通し, 交通の便がさらに良くなります. 長野県内GDPの内, 製造業は24.8%です. 加工組立型製品の製造品出荷額構成比は, 自動車産業の愛知, 造船業の長崎に次いで全国3位となっています.

ハイブリッド車用角度センサーを製造する多摩川精機(飯田市)(世界シェア90%強)や, ミニチュアボールベアリングを製造するミニベアミツミ(御代田町)(世界シェア65%)などがあり, ものづくりを支える技術力は整っています.

航空宇宙関連企業が特に集積しているのは, 飯田市周辺の県南部です.

 

愛知県, 岐阜県, 三重県, 静岡県, 長野県の5県にわたる地域を, 国が「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」として指定しており, 長野県では57社が特区制度を利用しています.

航空機産業の現状について

主要国の航空宇宙産業生産額を見てみると, アメリカが21.4兆円と突出しているのは当然のことながら, イギリス4.2兆円, フランス6.0兆円, ドイツ3.9兆円, カナダ2.3兆円に対して, 日本は1.7兆円に留まっています.

日本の自動車産業生産額の51.9兆円と比べるといかに少ないかが分かります.

このような生産額ながら, 航空機産業には将来性があります. ジェット旅客機の世界の需要予測を見てみると, 2015年に機体数が22510であるのに対し, 2035年には機体数は45240機, 新規需要と代替需要を合わせると納入機数は39620機にもなると予測されております.

海外における子空気製造状況を見ると, 大型・中型機をBoeing(米)・Airbus(欧)が, リージョナルジェットをボンバルディア(カナダ)・エンブラエル(ブラジル)が製造しており, そのリージョナルジェットの市場に日本・中国・ロシア・インドが参入を始めている状況です.

大手航空機メーカーの機材サイクルを見ても分かる通り, 航空機は開発すると20年程度使い続けることになります.

航空機産業のサプライチェーンを見ると, 完成機メーカー(Boeing, Airbus)ni

Tier1(パートナー)である機体製造の三菱重工など, エンジン製造のGEなど, 航空機システム製造のナブテスコなどが納入し, そのTier1に対して, Tier2(サプライヤー)がさらに細かい部品・機器を納入しています.

 

航空機産業の受注形態は

従来は工程外注方式(のこぎり発注)でしたが, 最近は一貫生産になってきています.

 

国内メーカーの参入状況としては, 機体には三菱重工・川崎重工・SUBARUなど, エンジンにはIHI・川崎重工・三菱重工航空エンジンなど, 航空機システムにはナブテスコ・住友精密工業・ジャムコなどが参入しています.

 

国内の動きについて

航空産業ビジョンが平成27年12月11日に策定されました.

これは, 政府として航空機産業の統一的な方針をもって一丸となり取り組むために取りまとめたものです.

 

全国クラスターフォーラムも平成27年以降開催されています.

全国各地には, 複数工程を一括して受注・生産しているものから勉強会まで, 様々な段階の企業グループ(クラスター)が存在しています. 全国航空機クラスター・ネットワークを構築することで, 全国のクラスターの連携を強化し, 個別のクラスターの枠を超えたクラスター間連携をすることで, 一貫生産体制の構築実現を目指します.

環境試験インフラ整備も少しずつ進んでいます.

航空機システムは, 航空機の約4割を占めている重要分野で, その航空機システムの開発に必要不可欠な環境試験装置を国内に作ろうという取り組みです.

 

長野県航空機産業振興ビジョンについて

航空機システムは航空機全体の内40%を占める市場で, 今後成長が見込まれ, 長野県が目指している市場です.

例えば, 制御・燃料供給・Landing・内装などです.

「アジアの航空機システム拠点」づくりということで集積化・拠点化・高度化が進められています.

長野県の取組について

(1)信州大学航空機システム共同研究講座コンソーシアム

(2)信州大学航空機システム共同研究講座開講

(3)精密・電子・航空技術部門への改組および航空機産業支援サテライトの設置(H29年4月~)

(4)国内唯一の環境試験機「着氷試験機」整備(H29年3月)

(5)サーマルデバイス評価装置の整備(H26年度)

(6)難削材切削特性評価装置の整備(H29年3月)

(7)航空機産業中核企業育成事業

(8)日刊工業新聞への取組紹介掲載(H29年3月)

信州大学における航空技術研究

信州大学 工学部 教授 航空宇宙システム研究センター 航空機システム部門長 柳原 正明氏による講演でした.

1.背景と信州大学 航空機システム共同研究講座について

2.共同研究講座の研究テーマ

Ⅰ)企業と連携した装備品システムの開発

・補助燃料タンクシステム

・ハイブリッド型ブレーキシステム

Ⅱ)JAXAと連携した先端研究

・GPS/INS複合航法システム

Ⅲ)実飛行を通した教育

・実機飛行を通した航空実践教育の展開

航空機産業の特徴と日本の目指すべき道

東京大学 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授 鈴木真二氏による講演でした.

航空機産業は成長産業

世界全体で見ると, 航空旅客輸送量は実質GDPの成長率(3%/year)に対して3割増(4%/year)で成長しています. エネルギー消費が2%/yearであるのに対して, かなりの成長だと言えます.

航空機産業の特殊性

特殊性1

・小品種, 少量生産, 20年以上の利用

・産業へ進出するには大きなイノベーションが必要

特殊性2

・広範な技術波及効果

特殊性3

・国際協業, 国際共同開発

特殊性4

・史上の動向に左右される(石油価格, 航空の自由化, LCCの急成長, 国際情勢)

特殊性5

・国の協力な支援

特殊性6

・極端な安全性, 信頼性要求

日本の航空機産業の将来

YS-11

日本の航空のポテンシャル

失われた50年

全国の航空機産業クラスター

航空機製造業のシナリオ(30年後)

EU-日本の共同研究(2016~)

JAXAの研究

宇宙航空研究開発機構 航空技術部門基盤技術統括 松尾 裕一氏の講演でした.

JAXAの航空の拠点は調布にあります. 基盤技術の中にも, 空力・構造・などの研究部門があって色々な研究がなされています.

 

 


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