CFD解析 ~ミニカーでドラフティングを行う場合の最適位置とその効果について~

CFD解析 ~ミニカーでドラフティングを行う場合の最適位置とその効果について~

概要

モータースポーツにおいて, 相手の背後について風避けに使うドラフティングという技術は勝負に勝つ上で重要である. スポーツカーやロードバイクにおけるドラフティングについては様々な研究がなされているが, 数cmオーダーでのドラフティングについての研究は少ない. 本研究では, 数センチメートルサイズのミニカー\(2\)台によるドラフティングを模したCFD解析を行い, ドラフティングに適した位置や, 位置による効果の違いについて調べる.

実験方法

仮定

シミュレーションを行うに当たっての仮定は以下の通りである.

仮定1

ミニカー(以下, 車)は全幅\(2cm\), 全長\(4cm\)の角柱であり, 空気の流れは2次元で考える. (車の上を通り抜ける空気の流れはないものとする.)

仮定2

相手(前の車)は高度な運転により, 一様流に対する一定の対気速度・位置を維持するものとする. (すなわち, 座標内で相手の位置は変化しない)

仮定3

自分(後ろの車)は高度な運転により, 相手との相対位置を一定に保つものとする. (すなわち, 座標内で自分の位置は変化しない)

条件設定

レイノルズ数\(Re=70\), クーラン数\(C=0.2\), 緩和法の加速パラメータ\(ω=1.0\)とし, 上流側の初期条件は\(u=1.0, v=0.0, p=0.0\)とする. イメージとしては, 全幅\(2cm\)の車が高度\(0m\)の大気中を\(5cm/s\)で進んでいることを想定している.

評価方法

Fig.1 自分(後ろの車)の9つの位置

Fig.1に示した9つの点に1つ1つ自分(後ろの車)を置いてシミュレーションを行い, 以下の2項目について評価を行う.

相手と自分(地点\(1~9\))の中心位置をそれぞれ格子番号で表すと,

相手\((100,100)\)

地点1\((150,100)\)

地点2\((200,100)\)

地点3\((250,100)\)

地点4\((150,115)\)

地点5\((200,115)\)

地点6\((250,115)\)

地点7\((150,130)\)

地点8\((200,130)\)

地点9\((250,130)\)

評価項目1

相手(前の車)の抵抗係数に対する自分(後ろの車)の抵抗係数の割合を\(R\)とおく. この\(R\)が小さいほど, 相手に対して優位な状態にいることになる.

評価項目2

カルマン渦の影響を受けて, 自分(後ろの車)には振動的な横力が働くことが予想される. この空気力の係数\(C_l\)の振幅を\(A\)とする.この\(A\)が小さいほど横風に煽られることなく運転が楽になる.

使用した言語など

プロセッサは「Intel® Core™ i5-5575R CPU @ 2.80GHz(4CPUs),~2.8GHz」, OSは「Windows10 Enterprise 2015 LTSB 64ビット(10.0, ビルド 10240)」, 言語はCythonを用い, 描画にはMatplotlibを用いた.

解法

圧力場の解析には緩和法を用いたPoisson方程式を, 速度場の解析にはKawamuraスキームを用いた. ソースコードは「7.ソースコード」に記載した.

結果

各地点において, \(n=0~6000[step]\)における圧力分布・速度ベクトル分布を描いた. そして, \(n=0~6000[step]\)までの相手, 自分それぞれの抵抗と横力の係数のグラフも描画した. なお, \(C_{d1}\)は相手の抵抗係数(\(x\)軸方向), \(C_{l1}\)は相手の横力係数(\(y\)軸方向), \(C_{d2}\)は自分の抵抗係数(\(x\)軸方向), \(C_{l2}\)は自分の横力係数(\(y\)軸方向)である.  各地点について, 圧力係数分布のアニメーション・速度ベクトル分布のアニメーション・抵抗係数の推移グラフの順に以下に示した.

地点1

地点1における圧力分布の変化

地点1における速度ベクトル分布の変化

地点1の空気力係数の推移

 

地点2

地点2における圧力分布の変化

地点2における速度ベクトル分布の変化

地点2の空気力係数の推移

 

地点3

地点3における圧力分布の変化

地点3における速度ベクトル分布の変化

地点3の空気力係数の推移

 

地点4

地点4における圧力分布の変化

地点4における速度ベクトル分布の変化

地点4の空気力係数の推移

 

地点5

地点5における圧力分布の変化

地点5における速度ベクトル分布の変化

地点5の空気力係数の推移

 

地点6

地点6における圧力分布の変化

地点6における速度ベクトル分布の変化

地点6の空気力係数の推移

 

地点7

地点7における圧力分布の変化

地点7における速度ベクトル分布の変化

地点7の空気力係数の推移

 

地点8

地点8における圧力分布の変化

地点8における速度ベクトル分布の変化

地点8の空気力係数の推移

 

地点9

地点9における圧力分布の変化

地点9における速度ベクトル分布の変化

地点9の空気力係数の推移

 

 

各地点の抵抗係数とR, A

ほぼ定常的な振動に移行しきった\(n=4000~6000[step]\)における抵抗係数\(C_{d1},C_{d2}\)の平均値を用いて \(R=\frac{C_{d2ave}}{C_{d1ave}}\) として\(R\)を計算した. また, \(n=4000~6000[step]に\)おける横力の最大値\(C_{l2max}\)と最小値\(C_{l2min}\)を用いて, \(A=\frac{C_{l2max}-C_{l2min}}{2}\)として\(A\)を計算した.

地点 \(C_{d1}\) \(C_{d2}\) \(R\) \(A\)
1 1.196 -0.059  -0.049  0.003
2 1.240  0.680  0.548  2.349
3 1.249  0.739  0.592  2.116
4 1.147  1.178  1.026  0.292
5 1.214  0.866  0.714  1.421
6 1.249  0.896  0.717  1.763
7 1.220  1.313  1.076  0.183
8 1.231  1.318  1.071  1.313

9

1.254  1.254  1.000  1.396

 

考察

評価項目1

地点1において\(R\)が最も小さくなった. したがって, 9地点の中で相手に対して最も優位な状態にいられるのは地点1である. (しかも, 前へ押されるような空気力が働いている.) 地点4, 5を比較すると, 4の方が\(R\)が大きくなっている. これは, 4の方が相手の進行軸に対して角度があり相手があまり風避けにならないためだと考えられる. これは7, 8, 9の比較においても同様である.

評価項目2

地点1,4,7では\(A\)の値が小さいため,横風に煽られることなく運転が楽である. その他の地点は地点1,4,7と比べて相手から遠い位置にあり, 相手から発生するカルマン渦が十分に発達して襲い掛かってくるため, 大きな横風を受けることになるのだと考えられる.

ソースコード