翼(よく) ~我々の生活になくてはならない形~

翼(よく) ~我々の生活になくてはならない形~

ライト兄弟が人類初となる有人動力飛行を成し遂げてから、115年が経とうとしています。
今や、1日に約10万便もの飛行機が地球の空を飛び交っています。
我々の移動手段としてなくてはならない存在になった飛行機。
この飛行機が飛ぶことができているのは「翼(よく)」のおかげです。
今回は「翼(よく)」が我々に与えている恩恵を見ていくことにします。

 

1.翼(よく)とは

そもそも翼とはなんでしょうか?
辞書には、
翼(よく)…
1.名詞
①つばさ。羽翼(うよく)。
②航空機の機体から左右い張り出した部分。主翼・尾翼など。
③軍隊の陣形で、左右に張り出した部分。運動競技の陣形などにもいう。「右―」「左―」
④プロペラ・タービンなどの、断面が航空機の主翼の断面と同じ形をした羽根。
⑤二十八宿の一。南方の第六宿。コップ座のα(アルファ)星と海蛇座の二二星。たすきぼし。翼宿。
(『デジタル大辞泉』より引用)

とあります。
技術的に人類に恩恵を与えている②と④について私なりにもう少し詳しく書くと、

翼(よく)…前方から流れてくる流体の向きを斜め下向きに変え、その反作用として流速に垂直な上方向の力を受けるような形状。

となります。

つまりこういうことです。


左から流体が流れてきます(流体が動かず翼が動いている場合も同様です)。流体は翼の周りを流れ最終的に右下へと進みます。つまり、翼(よく)は流体に下向きの速度を与えたということになり、その反作用として上向きの力を受けることになるのです。

このような特徴を持った翼(よく)ですが、使われ方は大きく分けて3種類あると思います。
以下ではそれについて見ていくことにします。

2.翼(よく)の使われ方

1.揚力発生装置としての翼(よく)

前述した通り、翼(よく)を流体中で動かすと力が発生します。この力を揚力と言い、これをそっくりそのまま利用しているのが、飛行機の翼(よく)です。
何も難しいことを考える必要はありません。翼(よく)を固定して、空気中をまっすぐ飛んでいると空気が流れてくるので、勝手に揚力が発生してくれる訳です。
揚力発生装置としての翼(よく)は人間が発明したというより、動物が発明したといった方がいいでしょう。地球上で最初に滑空飛行を行った動物、脊椎動物で言えば中生代三畳紀中期の翼竜、非脊椎動物も含めると古生代の大型の昆虫(2億9000万年前のメガネウラなど)でしょう。

この仕組みを利用しているのは、飛行機の他に、レーシングカーのウイング、ハンググライダー、パラグライダー、カイトサーフィンなどがあります。

2.推力発生装置としての翼(よく)

揚力装置としての翼(よく)は言うなれば動物の模倣です。しかしここからは人類が発明した装置になります。
翼(よく)を動かすと、流れを変えることができます。この性質と「回転」を組み合わせたのが「推力発生装置としての翼(よく)」です。
円筒の外側に翼を何枚も付けて「翼列」を作りそれを回転させることで流体を押し出します。(内側でもよいのですが大抵の場合翼を外側に付けた円筒を動かします)

この「推力発生装置としての翼(よく)」のルーツになるものを発明したのは、アルキメデスかもしれません。アルキメデスは螺旋について研究していましたが、彼は円筒の外側または内側に螺旋を付けてそれを回転させることにより、物を輸送できることを発見しました。この「螺旋+回転」という考えは、レオナルド・ダ・ヴィンチにも受け継がれ、彼は螺旋を上部に付けたヘリコプターのような乗り物を考案しています。「螺旋+回転」という考えを推力発生装置として実現したものはたくさんあります。ネジもそうですし、水をくみ上げるアルキメディアン・スクリューもそうです。しかし、「螺旋+回転」の考え方を発展させた「翼列」が初めて推力発生装置として実現したのは船のスクリューではないでしょうか。ここでは、もう螺旋形状は存在せず、螺旋を細かく分解したような「翼列」が用いられています。
このスクリューはやがて気体にも応用され、プロペラ機のプロペラ、蒸気タービンやガスタービンやジェットエンジンの圧縮機、ヘリコプターのローターなどへと繋がっていきました。

その他に推力発生装置としての翼(よく)を用いているのは、ターボファンエンジンのファン、扇風機、換気扇などです。

3.電力発生装置としての翼(よく)

「推力発生装置としての翼(よく)」と対になるのが「電力発生装置としての翼(よく)」です。小学校の理科でやる「モーターは発電機にもなるよ!」っていうのと同じ仕組みです。
つまり、翼列を回転させて流体を押し出すのではなく、流体を流して翼列を回転させ、その回転によって発電するということです。「電力発生装置としての翼(よく)」が初めて登場したのは、おそらく19世紀でしょう。どこから「翼列」とみなしてよいのかに議論の余地はありますが、水力発電や蒸気による発電で翼列のタービンが使用されるようになったのも、風力発電が始まったのも19世紀です。

電力発生装置としての翼(よく)は、火力・風力・水力・原子力・地熱など大半の発電で使われています。多量の電力を消費する人類にとってなくてはならないものとなっています。

3.まとめ

このように翼(よく)は
①揚力発生装置としての翼(よく)
②推力発生装置としての翼(よく)
③電力発生装置としての翼(よく)
の3種類に分類できます。
動物が長い年月をかけて手に入れた翼(つばさ)。それを我々は翼(よく)として確立し、さらには翼列にすることで推力や電力の発生にも役立てています。このように見ると、翼(よく)は人類の生活になくてはならない形状で、元を辿れば動物の模倣であると言えども、人類史に残る発明なのではないでしょうか。