飛行機におけるバイオミメティックス(生体模倣)

飛行機におけるバイオミメティックス(生体模倣)

生物は地球上に誕生してから38億年間進化を続けてきた歴史があります。

その過程で獲得した「体の形状」や「動作」の中には、我々人類が思い付かないものも少なくありません。

このような生物の機能を工学的に応用することをバイオミメティクス(生体模倣)と言います。

バイオミメティクスは飛行機においても性能向上に一役を買うと期待されています。

以下では、今後期待されるバイオミメティクスを挙げていきたいと思います。

 

 

 

カタツムリの殻


カタツムリの殻は汚れないことで有名です。雨の日、カタツムリを見かけてもいつも殻はピカピカですよね。これはカタツムリの殻の表面に特徴があるからです。

カタツムリの殻には非常に小さな溝が規則正しく並んでいます。この溝に水が溜まることによって殻の表面に水の膜が形成されます。その結果、油などの汚れをはじき、殻の表面がきれいな状態に保たれるのです。

この表面の形状を飛行機の機体表面にも適用することで、「汚れにくい機体」が実現できます。これはメンテナンス性を向上させ、メンテナンスの人件費やメンテナンス時間の削減につながると考えられます。

ハスの葉


ハスの葉は水をはじくことで有名です。

ハスの葉の表面には非常に小さな凹凸があり、この構造により、蓮の葉の表面に落ちた水滴はその表面を転がるように滑り落ちていきます。

この表面の形状を飛行機の機体表面にも適用することで、「水がつきにくい機体」が実現できます。これによってもメンテナンス性が向上されると考えられます。

フクロウの羽


フクロウは獲物を狩る時、静かに滑空して忍び寄ることで有名です。この静かさはふくろうの羽によって達成されています。

フクロウの風切羽には他の鳥にはないセレーションと呼ばれるギザギザがあり、これが空気をうまく逃がして抵抗及び騒音を少なくしているのです。

飛行機の騒音は、大きく分けて、ジェットエンジンによるものと機体によるものがあります。

昔はジェットエンジンによる騒音が支配的でしたが、改良によってジェットエンジンの騒音が低減され、機体の騒音も無視できなくなってきました。

このフクロウの羽の形状を適用することにより、低騒音の主翼を実現し、結果として、飛行機の騒音をより低減できるかもしれません。

 

 

サメの肌

 

サメの肌は水を体に沿わせて綺麗に流すような形状をしています。この綺麗な流れを層流と言い、一方で層流に対して乱れた流れを乱流と言います。

物体表面を流体が流れる時、層流は乱流に比べて抵抗が小さくて済みます。これは飛行機の機体表面においても事実で、機体表面の流れの多くを層流にすることができれば機体表面で発生する抵抗は小さくなり、より性能が良くなります。

サメの肌表面には鋭い歯のような鱗がすべて頭から尾に向かって整然と並んでおり、それらによってできる小さな渦によって流れが乱流になることを防いでいるのです。

実は、最近、サメの肌をもとに作られた翼が性能を向上させたという研究報告がありました。

こちらの記事です。

 

アホウドリの滑空

地上での動きが阿呆にしか見えないので不名誉な名前を付けられてしまったアホウドリ(Albatross)。しかし、アホウドリは、鳥類の中でもトップクラスの滑空能力があります。

一般に、「鳥は翼を羽ばたかせるものだ」という認識が強いかもしれませんが、アホウドリは一度も羽ばたかずに数千キロを滑空することができます。

なんか意味が分からないレベルの距離なのですが、原理は以下の通りです。

まず、風上に向かって飛行することで簡単に揚力を得て空高く上昇します。上昇した後は、その貯金を使って少しずつ降下しながらも風下に向かって滑空します。これを繰り返すことで、疲労やエネルギー補給を無視すれば半永久的に飛んでいられます。後は、できるだけ目的地に近づくように、これを繰り返せば良い訳です。

(ヨットのオフショア・レースで上手く帆の向きを操作して、風の力だけでゴールに向かうのと似ていますね。)

この飛行方法をするためには、2つの能力が必要です。

翼を固定するための強靭な筋肉と、どちらが風上かを正確に読み取る能力です。

アホウドリの能力を飛行機に応用することを考えた時、前者の能力は、固定翼機である以上難なくクリアできますが、問題は2つ目の能力です。

風上を正確に感知するセンサというものは、最新の技術をもってしてもかなり難しいようです。

この課題を解決して実機に適用することができたとしたら、必要な燃料は劇的に減ることでしょう。

まとめ

バイオミメティクスはより良い飛行機の開発に欠かせないものです。機体表面形状によるメンテナンス性の向上、主翼表面の形状による騒音低減と性能向上、優れたセンサ・システムの導入による燃費改善。これらがバイオミメティクスによって達成される日は近いかもしれません。

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