SNSで存在を知り、書店でなんとなく買ってみた『日本国紀』。ちょうど『サピエンス全史』・『ホモデウス』を読み終えたところだったので、「日本の通史も学んでみるか」と思って購入しした。
読み始めてすぐに、これは歴史書というよりはエッセイだと感じた。客観的史実以外に、筆者の感情がところどころに出てくる。
また、筆者の考え方も右寄りだなぁと感じた。朝日新聞を購読する家庭に育ち、中学生まである種の「右翼アレルギー」だった私にとっては、あまり気持ちのいい読み物ではなかった。
ただ、そういう印象は気にせずに最後まで読んでみることにした。
この本は、縄文時代から平成までを14章に渡って記している。明治維新以前で半分、明治維新以後で半分という配分だ。教育指導要領に従った歴史の授業で習う歴史観とは違う、ある意味右寄りの歴史観に基づき書かれている。ただ、筆者はあくまで「学校で教えられる歴史観」に囚われず資料に基づき最も真実に近いものを書こうとしたということが伝わってくる。
途中からは筆者の語り口にも慣れてきたが、第12章 敗戦と占領 でこの本の印象が変わった。この章では、GHQによる日本の占領について批判しまくっている。GHQによる憲法制定や、言論・思想の統制・弾圧が行われ、日本国民に「罪の意識」を植え付けたということが書かれている。どこまでGHQによる占領を批判するべきかは議論の余地があるが、間違いなく言えるのは、「戦後の日本教育は現在に至るまで、GHQが望んだようなバイアスがかかったものである」ということだ。普通に日本の教育を受けていれば、「日本はアジアに対して侵略戦争を行った」「連合国側が正しく、戦前の日本は間違っていた」という思想を刷り込まれるようになっている。この思想を否定するかどうかは別にして、この思想はGHQの意図したバイアスがかかったものであることは皆が認識しておくべきだと思う。
読み始めた時は「右翼色の強い本だな」と感じていたが、読み終わった今となっては「知見を広げられたし読んで良かった」と思う。別に右翼的な思想に変わった訳ではない。ただ、右翼の主張に耳を塞ぐ日本人が多い中、一度右寄りの考え方に耳を傾けてみることがあってもいいとは思う。別に右寄りになる必要はないし、私も別に右寄りになったとは思っていない。しかし、頭から右寄りの考えを否定するのもまた問題である。
右寄りの考え方を知るために本書は役立つのではないかと思う。