東京大学 航空宇宙工学科 卒業設計を終えて (航空機設計)


卒業設計の概要

東京大学 航空宇宙工学科には「卒業設計」なるものがあります.

卒業論文は院試後の9月から初めて11月で終わり, その後, 12月から2月までが卒業設計の期間です.

卒業設計はシステムコースと推進コースで選択できる設計物が異なります.

 

システムコースの設計物

システムコースは, 宇宙機または航空機から選択します.

基本的には自分の希望した方を設計できます.

宇宙機は2人1組で設計を進めるので, 偶数人数になるのが好ましいです. 航空機は1人1機というのが基本です.

宇宙機はフィージビリティを問い詰められるので, 論文を読んでしっかりとした計算で実現性を示す必要があります. 一方, 航空機は, 計算はもちろんしますが, どちらかというと図面重視の設計になります. 

図面については, 宇宙機はCAD, 航空機は手書きです.

 

推進コースの設計物

推進コースは, ジェットエンジンまたはロケットエンジンまたはレシプロエンジンから選択します.

人数がそれぞれ厳密に決まっているのかは分かりませんが, 希望した物とは違う物を設計する羽目になった人がいたのは事実です.

私はシステムコースだったのであまり細かい内容は知らないのですが, 「レシプロエンジンが他の2つに比べてはるかに楽」というのはよく聞きます. 1人1つずつ設計するはずです.

図面の制作方法はジェットエンジンが手書きということしか知りません.

 

卒業設計の流れ(航空機設計)

ここからは実体験に基づいて卒業設計の流れ(航空機設計)を記していきます.

私が航空機設計を選んだのは, 旅客機の空力・設計が専門の研究室所属だったから当然の流れです. それに, 卒業論文で次世代旅客機の研究を行ったので, その機体を卒業設計で設計してみたかったというのもあります.

実は, 私が卒業設計で設計したBlended Wing Body型航空機は, 3Aセメスターの「航空機設計法第一」, 4Sセメスターの「航空機設計法第二」という授業の課題としても課されていた機体なので, 実質私は, 3年生の秋からこの卒業設計まで16ヵ月くらいBlended Wing Body型航空機に携わっていたことになります. 

システムコース全体ガイダンス(11月末)

システムコースでは卒論を提出した数日後にガイダンスがあります. ここで航空機設計と宇宙機設計についての説明を受け, それから数日でどちらを選択するか決定しました.

設計ガイダンス(11月末)

航空機設計のガイダンスでは, 製図室に集められて今後の進め方について説明されました.

計画設定試問(12月頭)

計画要求書を作成して, どういう機体を作るのかを一人ずつ説明しました. 計画要求書を提出します.

基礎計画書提出(12月中旬)

基礎計画書では, 「航空機設計法第一」の授業で半年かけてやった内容を2週間ほどで仕上げる必要がありました. 報告書と初期三面図を提出します. チェックされ数日で返却されます.

初期性能等計算書提出(1月中旬)

初期性能等計算書では, 「航空機設計法第二」の授業で半年かけてやった内容を3週間ほどで仕上げる必要がありました. 計算書と修正三面図を提出します. 航空機設計法第二の授業は受けていない人も多かったので, そういう人達は大変だったと思います. 逆に, 授業をとっていた私は余裕をかまし過ぎて残り5日から始めた結果, ギリギリ提出期限の時刻に教授のポストに駆け込むことになりました. 

中間指導(1月中旬)

初期性能等計算書の返却されます. これが終われば製図室で図面を描き続ける生活が始まります. 

設計指導(中間指導後~中間試問)

担当の教授が毎日平日午後に製図室にいらっしゃって, 一人一人の図面にアドバイスをしてくださいます. この時間帯にいないと, この子は卒業できるのかなぁと心配されます.

※私は2月初めに2泊3日の香川旅行に行きました.

中間試問(2月中旬)

中間試問は会議室で3人ずつまとめて15分間行います. 教授が何人かいらっしゃって, アドバイスしてくださったり, 追加で図面を描くように指示されたりします. 私はここで2つの断面と鳥瞰図を描くように言われました.

ラストスパート

最後の2週間です. 土日にも来ないといけなくなったり, 徹夜しないといけなくなったりします. ただ, 執念を持って取り組めば, 平日の昼間だけで仕上げることは可能だと思います.

※私はここで3Dayインターンに行きました. もちろんインターンに行った3日間も毎晩製図室で5時間ほど図面を描いていましたが.

ちなみに私の最後の1週間の過ごし方を載せておきます. 正直徹夜が楽しくなっていて無駄に徹夜した気がします. でも, 思ったより睡眠時間取れてますね. 

2/22(金)14:00~2/23(土)0:30 製図室

帰宅・7時間睡眠・登校

2/23(土)9:00~2/24(日)1:30 製図室

帰宅・10時間睡眠・登校

2/24(日)14:00~2/25(月)19:00 製図室(2時間仮眠含む)

帰宅・3時間睡眠・登校

2/26(火)0:30~2/27(水)2:00 製図室(4時間仮眠含む)

帰宅・9時間睡眠・登校

2/27(水)14:00~2/28(木)12:00 製図室・最終試問(3時間飲み会に出かけたのを含む。2時間仮眠含む)

最終試問(2月末)

会議室で1人15分間何人かの教授を前に図面を見せます. 図面について突っ込まれたり, 航空機の構造やデバイスについてちゃんと理解しているかを問われたりします. 多くの人は, 何か所か修正するように言われるので, それを修正して提出すれば卒業設計は終了です.

私の場合, 機体がエキセントリックだったので, 和気藹々と議論して修正指示を出されることなく終わりました.

 

完成図面

実際に作製した図面を載せます.

組立三面図

一般配置図

主要構造三面図

翼胴結合部

垂直尾翼

エンジン架

主脚

前脚

舵面

断面図(追加)

構造鳥瞰図(追加)

 

 

 

まとめ

航空機設計は, 教授陣に問い詰められて苦しい思いをすることはありませんが, 作業時間はそれなりのものがあります.

徹夜しなくても完成させられますが, 徹夜すると深夜テンションで内輪ネタで盛り上がったりして人生最後の青春を味わえます. 

卒業設計は, 人生経験としてはなんだかんだ楽しかったですが, 二度とやりたくありません.

 

 

 

 

 


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